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大学受験を通じて高校生を指導していく中で、様々な経験をしています。
そんな経験の中から得た「気づき」を、伝えていきます。
(毎週月曜日更新予定)
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受験の『リセット願望』
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「リセット願望」という言葉が使われることがあります。
「ゼロから始めたくなる気持ち」という意味です。
コンピューターゲームなどでうまくいかない時に
機械を「リセット」して最初からやり直すというところから
に使われるようになったようです。
だから『リセット願望から整形手術をした』
とか『リセット願望から自殺を図った』などという、
あまり好ましくない文脈で使われます。
大学受験の世界で
このリセット願望というのは結構よく出てくる症状です。
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「塾、辞めます…」
その男子生徒が申し出てきたのは、高2の冬のことでした。
真面目で、ちょっと不器用なところがある男の子です。
受験までいよいよ一年、『君たちはもう受験生なんだよ!』
と2年生全体のムードづくりをしていた最中のことでした。
面接の場を設けて聞いた話をまとめると、以下のようになります。
・最近志望が変わり、今までよりもずっとレベルの高い大学/学部に
どうしても行きたいと思うようになった。
・ただでさえ自分は勉強が間に合ってない。
・このままでは絶対に受からないと思うから自分で一から勉強をやり直したい。
特に最後の「一から勉強を…」というのは典型的リセット願望の反応でした。
「使用する問題集を替える」「塾を替える」
新しい場面設定にして、新しいスタートを切りたい…
(塾を辞めたいがための口実としてそういうことをいう生徒ではなかったことを
念のため記しておきます)
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理屈で考えれば、勉強は「積み重ね」ですから、
「ゼロに戻して勉強し直す」というのはナンセンスです。
一冊の問題集をきちんと終わらせられない生徒が、
新しい問題集に手を出しても仕方ありません。
本人と塾のシステムとの相性が決して悪くないことは、
講師も担当チューターも認めています。
では、正論を伝えてとことん説得するべきなのか…
答えは NO でした。
精神的に自分を追いつめてしまっっている彼に正論を持ち出して説得しても、
つまり感情に理屈をぶつけても、効果がないだろうと判断しました。
その代わりに
【では一から勉強をやり直してみよう。
残念だけど、塾は辞めることになっても仕方ない】
という対応をしました。
もちろん、いきなりそう勧めたわけではありません。
「一般的には、そういう考え方はあまり有効でない可能性が高いと言われる」
などと…なるべく婉曲に(^^;)リセット願望が好ましくない話は伝えました。
(こういう時にこちらが勢い込んで断定的な言い方をしてしまうと
先方が心を閉ざしてしまうので…)
その上で、
─でも、君がそこまで考えて言い出したことだから、
とことん頑張れば道が開けるかも知れない。
夢実現に向けて思ったことを実行してみればいいじゃないか。
と、むしろ勇気づけました。
ただし、
─もし途中で「イマイチうまくいかない」とか「やっぱりこの塾に戻りたい」
とかなったら、遠慮なく戻って来ていいんだよ。
と言葉を添えて…。
つまり、
【今までのデータを保存した上で、リセットを勧めた】
わけです。
「リセットは必ずしも悪いことではない」という立場をとってみたのです。
整形や自殺のような後戻りのできないリセットはともかく、
人生には【保存してリセット】できるケースはたくさんあるはず。
そして、人生には経験しないと分からないことが多くあります…
というより、理屈だけで分かってしまうことなど
ごく少ないのだといってもいいのではないでしょうか。
大人の目からはうまくいかなそうなことが瞭然としていても、
敢えて体験させることで、今後の人生の糧にする、
その方が、長い目で見たらプラスであることは多いと思います。
そこで、
「今の状態に戻ろうと思えば戻れるんだよ」とデータを保存しておいて、
「さあ、自分が思ったようにしてご覧」とリセットを見守ってあげる
という引き出し方は充分あり得るという判断の元に対応したのです。
一旦退塾した生徒が、そうおいそれとは戻って来るわけもないので、
塾の経営面からみればマイナスの方向に
彼の背中を押してしまっているわけなんですが…(^^;)
─しかし、自分は広義での教育者でもありたい
と、やせ我慢(!?)して、リセットを容認しました。
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ところで、上述したエピソードには後日譚があります。
それやこれやで、リセットして退塾していった彼が、
先日数年ぶりに塾を尋ねて来てくれたのです。
「先生、○○です。覚えてらっしゃいますか!?」
アカ抜けた爽やかな大学生の姿になっていました。
少し遠回りをして(つまり浪人して)、
結局、その当時の志望とは違う大学の違う学部に通うことになったそうです。
と、いうことは、
リセットが大学受験という意味では必ずしも有効に働かなかったわけです。
けれども、彼は明るい表情で、大学生活が充実している話をしてくれました。
経験が彼をひと回り大きくさせたことも事実なわけです。
「あんな形で退塾しちゃったんで、顔を出しづらかったんですが…」
と、私と塾に気を遣ってくれているようでしたが、
─今の君が充実しているというのが何よりだよ。
と心から思いました。
君との人間関係はちゃんと【保存】してあるんだよ、と…。
【今回の引出し】
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今までのデータを保存できるなら、リセットも有効な選択肢である。
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<筆者プロフィール>
【岩田朋彦(いわたともひこ)】
千葉県柏市にある最難関大学受験のための学習塾「IRL」の塾長です。
『ベストバリュー・ベストモチベーション・ベストケア』をモットーに、
ひとりでも多くの生徒が、大学受験を通じて人間的にも大きく成長してくれる
ことを願いながら、日々の塾運営をしています。
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〔澄みわたる英語:blog〕
http://irleigo.blog105.fc2.com/
大学受験IRLが運営するブログです。
普通に英語を勉強していると間違ってしまいそうなところ、もやもや感が漂っ
てしまうところを解消できるヒントを提供しています。
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